遊び鳥
籠の中の鳥は 翼を持っている事を
忘れているの
外という憧れが
独り歩きをしていて
信頼がない
開けっ放しの扉を前に
雨ふりを無視した
閉じた傘の様に
小さな羽根を閉まってる
出られるのにね
晴れた日にお天道様を
見上げられる
女鳥たちは
そう笑う
籠の格子越しにだって
陽は照るものよ
籠の中の女鳥は
そう笑う
紅をひいたような
嘴と
目元にほどこした
鮮やかな
一筋のラインが
外の鳥どもを誘う
昏くなる頃
開けっ放しの扉から
鳥どもは
入ってくる
落ちない紅を
重なり合わせ
閉じていた羽根を
今開く
硬く閉じた嘴から
小さな声が漏れる
この身を持つ
私を
どうか
選んで頂戴
選ばれる事を待つ私
選ばれるために
持った術を曝け出す
羽根を空々しく
広げている間
私に
与えられた
選択されるのを
待つ時間
何を思うのだろう
昏い外に目が飲み込まれる
鳥どもは
私と夜を遊び
私は
一夜一夜
その夜に
笑みと共に
賭けている
籠へ自由に入れる
鳥どもが
私の唯一の救いとなり得て
籠から出ていく
鳥どもが
無情に私の希望を
蹴散らかす
羽を小さく閉じる
足元に散らばる
粟の粒にまぎれた
今朝がた落ちた
粒涙を
籠の外の陽が照らす
籠の外へ出たいんじゃない
籠の外へ
連れ出して欲しいの
一羽の男鳥
紅がはみ出た
その嘴で構わない
そう呟き
閉じた羽根の
ずっと下に
寄り添って
連れ出して欲しい
お天道様を見上げるには
私には
眩しすぎる
陽の沈む
少し昏いくらいが丁度いい
そう
籠の中から
見つめる陽に
馴染んでる
籠の中の私を
外の女鳥が
笑う
出られるのにね
飛べるのにね
舞い戻る場所を持っていないのかしら
閉じた羽根の下
小さく打つ
鼓動が
言う
泣くな
今は落とすな
嘴を
もう一度上へと
向ける
籠の中の女鳥
遊び鳥
今宵の一夜に
この羽根を賭けてみる
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